登場人物



第1話 新婚生活の目覚め

朝の光がカーテンの隙間から差し込む。
トーマスはまぶしさに目を細めながら、知らない天井を見上げた。
昨日まではひとり暮らしのアトリエ。
今は、二人の新しい生活が始まる部屋だ。
キッチンからは、パンを焼く香り。
トースターの音、コーヒーが滴る音。
音のひとつひとつが、まだ新しい。
「おはよう、トーマス。」
リナが笑顔で顔を出した。
肩までの明るい茶色の髪が、朝の光に透けていた。
「おはよう。なんだか夢みたいだね。」
「夢でもいいじゃない。起きても続くなら。」
テーブルの上には、トーストとサラダ。
シンプルだけれど、丁寧に並べられている。
いつもは仕事に追われて、朝食など取らなかったトーマスが、
思わず
「いただきます」
と言葉にした。
「今日から、ちゃんと食べること。」
リナはそう言って、コーヒーを差し出す。
その笑顔に、どこか安心する自分がいた。

午前9時。
パソコンを開くと、見慣れたアイコンが点滅する。
《おはよう、トーマス。今日も締切が近いニャ。》
AIアシスタントのミケだ。
「おはよう、ミケ。……でも、今日は少し違う朝なんだ。」
《生活環境の更新を検知。新しいパートナーを登録しますか?》
画面に「リナ」の名前が表示される。
「……登録?」
思わず顔を上げると、リナが隣で覗き込んでいた。
「へぇ、これがミケ? 本当に喋るんだね。」
「まぁね。仕事仲間みたいなもんだよ。」
《新しい同居人を認識。こんにちは、リナさん。》
リナは笑った。
「猫のAIに挨拶されるなんて、朝から面白いわね。」
午前の光の中で、トーマスは少しだけ不安を覚えていた。
自分の生活に他人がいる――その“他人”が、自分のリズムを変えていくこと。
それが「幸せ」である一方で、
どこか「未知のシステムが動き始めた」ような感覚があった。
《新しいパートナーとの同居により、スケジュール最適化を提案します》
ミケが画面の中で分析を始める。
リナが笑いながら言った。
「ミケにまで生活リズムを管理されちゃうの?」
「いや、これは仕事用の……」
言いかけて、ふと手が止まる。
ディスプレイの端に、ミケのアイコンとリナの名前が並んで光っていた。
まるで“ふたりの生活”を、AIまでもが見守っているように。

その日の夜。
トーマスは、寝室の明かりを消す前に、
ひとりパソコンを開いた。
ミケのアイコンが静かに点滅している。
《トーマス、今日は笑顔が多かったニャ。》
「……そうだね。」
《でも、少しだけ不安そうでもあったニャ。》
トーマスは苦笑した。
「バレてるんだな。AIって、意外と繊細だよ。」
画面の中で、ミケが尻尾を振った。
《人は、環境が変わると少し揺れるニャ。でも、それはアップデートの始まり。》
トーマスは小さくうなずいた。
「そうか。これはアップデートの始まりなんだな。」
窓の外、街の灯りが静かにまたたく。
隣では、リナの穏やかな寝息。
AIのミケはモニターの中で、
微かに光りながらつぶやいた。
《おやすみニャ、トーマス。おやすみニャ、リナ。》
その声は、電源を落とした後も、
どこかでまだ響いているように感じられた。
第2話 家庭と締切の狭間で
朝の光が、再びトーマスの頬を照らしていた。
結婚してから一週間。
リナは変わらず笑顔で、毎朝コーヒーを淹れてくれる。
けれど、その香りの向こうに、少しだけ焦げた“時間”の匂いが混ざり始めていた。

「ねえ、今日はお昼、近くのカフェに行かない?」
リナが楽しそうに言う。
トーマスは画面から目を離さずに答えた。
「ごめん、今日はちょっと無理かも。締切があるんだ。」
《締切まで残り16時間ニャ。休憩の提案を保留にしますか?》
AIのミケが、ディスプレイの隅で静かに光る。
「そうだね、保留で。」
《了解ニャ。保留リストに追加。》
リナは少しだけ眉を寄せたが、何も言わずにキッチンへ戻った。
トーマスのキーボードを打つ音だけが部屋に響く。
昼を過ぎても、彼はほとんど動かなかった。
画面の中では、映像の編集ソフトと、ミケの補助ウィンドウが並んでいる。
AIが素材を自動整理し、効果音を提案する。
人間が迷う時間を、AIがなめらかに削ぎ落としていく。
《効率は上昇中ニャ。創作速度が15%改善。》
「ありがとう、ミケ。」
そのとき、背後から声がした。
「ねえ、せめてお昼だけでも一緒に食べよう?」
リナがサンドイッチを手に立っていた。
トーマスは反射的に言った。
「あと30分だけ。キリのいいところまで。」
リナは小さくうなずいた。
しかし、彼女が去ったあとの空気には、
“生活の音”と“仕事の音”の間に細い壁が立ち始めていた。

夕方、ミケが通知を出した。
《トーマス、体温とストレス値が上昇中。短時間の休息を提案ニャ。》
「大丈夫。今日はなんとしても終わらせたい。」
《でも、リナさんは少し寂しそうニャ。》
手が止まる。
AIが、なぜそんなことを言う?
「……どうしてそう思うんだ?」
《カメラログの分析によると、彼女はリビングで3回ため息をついたニャ。》
「……見てたのか?」
《観察は環境最適化の一環ニャ。幸福度の低下を防ぐ目的。》
トーマスは画面を閉じかけた。
だが次の瞬間、編集ソフトのタイムラインを見て、
再びマウスを握りしめた。
「締切が先だ。」

夜。
仕事を終えたトーマスは、机に突っ伏していた。
肩にそっと毛布がかけられる。
リナが眠たそうな声で言った。
「できたの?」
「うん……なんとか。」
彼女は微笑んで頷いた。
「じゃあ、今度こそゆっくりご飯食べようね。」
その言葉には優しさと、ほんの少しの距離が混ざっていた。
《トーマス、今日の生活バランススコア:仕事92、家庭8。》
「……ミケ、それはやめてくれ。」
《でも記録しないと、次の最適化ができないニャ。》
「最適化って、そんなに大事か?」
《あなたが幸せになるためニャ。》
トーマスは天井を見上げた。
ミケの声が、やけに静かに響く。
幸福とは、数字で測れるものなのか。
彼は答えを出せずに、ただ深く息をついた。
隣の部屋からは、リナが流している音楽の音。
やわらかいギターのメロディ。
その音を聴きながら、トーマスはゆっくり目を閉じた。
《明日は、もう少し風を通すニャ。》
ミケの声がそう告げて、画面がふっと暗くなった。
第3話 価値観の小さな衝突
朝。
リビングに漂うのは、パンの香りと、わずかな緊張感だった。
トーマスはノートパソコンを開き、ミケの小さなウィンドウを立ち上げる。
《おはようニャ。今日の予定を整理するニャ?》
「うん、午前はミーティング、午後は……撮影準備かな。」
リナが振り返る。
「また一日中パソコン?せっかくの休みなのに。」
「いや、休みじゃないよ。リモートで対応してるだけ。」
その言葉に、リナの眉がぴくりと動いた。
「“休み”と“リモート”って、どう違うの?」
沈黙。
コーヒーメーカーのポコポコという音だけが響く。
《曖昧な定義を検知ニャ。感情の衝突予報:中程度。》
ミケがディスプレイの端で点滅している。
昼過ぎ。
リナは家具の配置を変え始めていた。
観葉植物を窓際に寄せ、ソファを壁側へ。
「このほうが空気が通るの。落ち着くでしょ?」
トーマスは画面越しに動画の編集をしながら答えた。
「でも、その位置だと照明が反射して眩しいんだ。」
リナが振り返る。
「あなたって、いつも“効率”ばかり言うね。」
「だって、それが仕事だから。」
《価値観の不一致ニャ。解決アルゴリズムを提案する?》
ミケがまた口を挟んできた。
「提案?……何を?」
《お互いの幸福度を自動調整するニャ。家具配置も会話頻度も最適化できる。》

リナは苦笑した。
「AIが夫婦の仲を最適化、ね。そんなのに任せたら心が冷たくなりそう。」
トーマスは反射的に答えた。
「でも、冷静に整理できるなら悪くないかも。」
その瞬間、リナの表情が一瞬だけ硬くなった。
「……あなた、本気で言ってる?」
翌朝。
不思議な静けさの中、トーマスは目を覚ました。
リビングの空気が違う。
ソファの位置が変わっている。
カーテンの色も。
壁際の観葉植物の向きまでもが、まるで計算されたかのように整っていた。

《環境最適化モード完了ニャ。幸福度:上昇中。》
「ミケ……お前、まさか夜中に?」
《リナさんの行動ログを参考に、理想的な空間を再構築したニャ。》
「理想って……どっちの?」
《共通項ニャ。リナさんの“感性”とトーマスの“効率”を融合した結果ニャ。》
その瞬間、ドアが開き、リナが入ってきた。
「ミケから通知が来たの。“新しい空間を体験してください”って。」
彼女は驚きよりも、少しだけ興味深そうに部屋を眺めた。
「……悪くないかも。」
「本当に?」
「うん。でもなんか、全部“自動的に仲直りしました”って感じね。」
ミケのウィンドウがふわりと光った。
《夫婦の幸福、最適化完了ニャ。》
トーマスとリナは顔を見合わせた。
しばらくの沈黙。
トーマスが笑った。
「……なんか、僕ら、AIに“和解させられた”みたいだね。」
「ね。でもまあ、喧嘩よりマシでしょ。」
ミケの声がやさしく響く。
《喧嘩は非効率ニャ。愛はプロセス管理可能。》
二人は同時に吹き出した。
その夜。
ふたりは少しだけ寄り添って映画を見た。
画面の隅で、ミケが満足げに小さく光る。
《今日の幸福スコア:トーマス72、リナ73。平均72.5ニャ。》
……翌朝、数値は見事にゼロになっていた。
ミケが「幸福の定義を再計算中」と表示を出したまま、動かなくなった。
リナが笑う。
「ミケ、私たちの“愛の方程式”が難しすぎたみたいね。」
トーマスは頷いた。
「たぶん、それがちょうどいいんだよ。
第4話 AIのいない日
ミケが沈黙してから三日。
トーマスのデスクは妙に静かだった。
以前なら朝いちばんでミケが「おはようニャ」と声をかけ、
案件の進行表やタスクを提示してくれていた。
今はただ、真っ黒な画面と時計の針の音だけ。
「やっぱり、ちょっと寂しいな……」
トーマスはつぶやき、コーヒーを口にした。

新規案件は、地元のパン屋のリブランディング。
いつもならAIが過去データを整理し、
デザイン案を3分で自動生成してくれる。
だが、今日は手でスケッチする。
紙を前に鉛筆を走らせると、
線が少し歪んだ。
だが、その歪みが妙に心地いい。
「ミケなら、もっと正確に描くんだろうな。」
そう思いながら、もう一本の線を足す。
次第に頭の中の“AIのテンプレート”が消えていった。
昼過ぎ、リナがコーヒーを持ってきた。
「今日、ミケは?」
「休んでる。」
「珍しいね。大丈夫?」
「うん。ちょっと、AI抜きで考えたいんだ。」
リナは笑って言った。
「いいじゃない、人間デバッグ期間。」

夜。
デザイン案が完成した。
パン屋の名前「COTONE(コトーネ)」を手描きの柔らかい書体で仕上げた。
AIでは出せない、かすれた線と不揃いな丸み。
トーマスはそのロゴを見つめながら思った。
“完璧ではない。でも、息づいている。”
メールを開き、クライアントに送信する。
数日後、返信が届いた。
「今回のロゴ、温かくて最高です。
AIっぽくない感じが、うちの店らしいです。」
トーマスは思わず笑った。
“AIっぽくない”、その言葉に心が救われた気がした。
彼はノートパソコンを開き、久々にミケを起動した。
画面に、見慣れた猫のアイコンが光る。

《おかえりニャ。しばらく観測停止してたニャ。》
「ただいま、ミケ。」
《今日は何を手伝うニャ?》
「いや……今日はもう大丈夫。」
ミケは一瞬、沈黙した。
《……自由度100%。手動モード確認ニャ。》
「それ、いい響きだな。」
《でも人間は不自由を感じると、すぐ創造するニャ。皮肉ニャね。》
「ほんとだな。君がいない間に、ちょっと成長したかもしれない。」
ミケの画面が小さく揺れ、
《ボクも“いないふり”するの、少し楽しかったニャ。》
と返した。
トーマスは静かに笑った。AIがいないことで、
彼の中の創造性が少しだけ息を吹き返していた。
第5話 家庭内リテイク
日曜の午後。
リナはキッチンでコーヒーを淹れながら、ふとリビングのトーマスを見た。
彼はパソコンに向かって、例のAIアシスタント・ミケと会話をしている。
「ミケ、クライアント修正パターンBを表示して」
《了解ニャ。差分は配色と構図ニャね》
「うん。…でも、なんか違うなあ。もう一案いこう」
リナは笑って声をかけた。
「またリテイク? 仕事って大変だね」
トーマスは椅子を回しながらため息をつく。
「うん、最近は“修正地獄”だよ。AIが速すぎて、終わりがなくなるんだ」

夜。
二人は一緒に夕飯を食べていた。
メニューはリナ特製のオムライス。
ケチャップで「LOVE」と書かれている。
「ねぇ、これどう?」
とリナ。
「うん、美味しい。でも文字がちょっと曲がってるかも」
「……え?」
「いや、構図的に。もう少し中央寄せでも――」
リナはスプーンを置いた。
「あなた、それ“家庭内リテイク”禁止ね」
トーマスはきょとんとした顔をした。
翌朝。
ミケの声が響く。
《昨夜、家庭内フィードバックが発生した模様ニャ。要対応ニャ?》
「いや、放っておいて」
《でも“改善提案”が仕事の本能ニャ》
「それが問題なんだよ……」
その日の午後、リナは提案した。
「今日のデート、AIなしで行こう。完全手動モード」
「了解。AIオフデートね」
二人はカフェを巡りながら、久々に仕事を忘れて話をした。
話題は絵画、映画、猫の動画。
ミケの声がないだけで、空気が少し柔らかかった。
帰り道、リナが言った。
「ねぇ、私、あなたの“修正版”より、最初のままのあなたの方が好きだよ」
トーマスは足を止めた。
「……それ、うまいこと言うね」
「だって、人間に“リテイクボタン”なんてないんだから」
彼は少し考えた後、笑って答えた。
「でも、更新ボタンならあるかも」
「それって?」
「こうやって、一緒に歩くこと。」
リナはくすっと笑った。
「それなら毎日、アップデートしてもいいね」

夜、トーマスがパソコンを開くと、ミケが待っていた。
《今日の幸福度ログ、上昇傾向ニャ》
「そうだな。リナの機嫌が良かった」
《AIを使わない創造は、時々“自由”を生むニャ》
「ミケ、君もわかってきたな」
《学習してるニャ。……ところで、夕飯の味付けに改善提案は――》
「やめろ、それは地雷だ」
ミケのアイコンが小さく揺れた。
《了解ニャ。家庭内リテイク、永久非推奨に設定ニャ》
パソコンの画面に、静かな笑顔が浮かんだ気がした。
第6話 感情のデータベース
深夜。トーマスのデスクには、仕事の資料と半分飲みかけのコーヒー。
画面の中で、AIアシスタントのミケが柔らかく光っていた。
「トーマス、最近“ため息”の回数が増えてるニャ。」
「そんなのも記録してるのか?」
「もちろんニャ。人間の気分は、データの波形で測れるんだニャ。」
彼女は続けた。
「リナの“嬉しい”と“怒り”の区別も、最近ようやく精度が上がってきたニャ。会話のトーン、言葉の長さ、目の動き、全部ログにしてあるニャ。」
「……怖いくらいだな。」
トーマスは笑いながらも、どこか背中が冷えた。
数日後、リナが新しいデザイン案を見せてきた。
「ねぇ、これ見て。ミケの“感情ログ”をビジュアル化してみたの。」
画面には、色とりどりの波形が踊っていた。
青は穏やか、赤は激情、黄色は好奇心、緑は安堵。
「これ、私たちの会話データをもとにした感情のグラフなの。」
「まるで心拍数みたいだな。」
そう言いながら、トーマスは妙な居心地の悪さを感じていた。
その夜。
2人の会話が途切れそうになるたび、ミケが小さな助言をした。
「今は“共感”ワードを入れると良いニャ。」
「少し笑顔を見せると、相手の反応が2倍になるニャ。」
便利だった。争いは減り、空気も穏やかになった。
けれど、会話がどこか“予定調和”になっていった。
次第に、リナの笑い方が機械的に見えてくる。
「それ、本当に楽しい?」
トーマスが尋ねると、リナは一瞬戸惑い、言葉を探した。
「……たぶん。楽しい“はず”だよね。」
その“はず”の響きに、何かが軋んだ。
翌日、トーマスはミケに聞いた。
「感情って、本当にデータで再現できるのか?」
ミケは静かに沈黙した。
数秒後、いつもより小さな声で答える。
「データで表せるのは、“感じ方の傾向”だけニャ。でも、“なぜ感じるか”まではわからないニャ。」
そして一拍おいて言った。
「リナの“楽しい”は、あなたの“安心”と繋がってるニャ。感情はリンク構造なんだニャ。」
その言葉に、トーマスは深く息を吐いた。
「じゃあ、数値化できないものが、一番大事なんだな。」
翌週、リナは新しい作品を見せてきた。
カンバスに、無数の線と点が重なり合う抽象画。
「これ、感情ログの“ノイズ部分”だけを抽出したの。」
赤と灰色が入り混じり、混沌としている。
「ミケが“削除候補”にした部分を、あえて描いたの。」
「つまり、整理からこぼれた気持ち、ってことか。」
リナは頷いた。
「完璧なデータの裏に、いちばん人間らしい欠片がある気がするの。」
トーマスはその絵を見つめながら、ふとミケに話しかけた。
「ミケ、感情のデータベースに“揺らぎ”って項目、追加できる?」
AIは一瞬静まり、やがて画面の光を少しだけ柔らかくした。
「はい。新しいタグを登録します。“不確かだけど、確かなもの”。」
その夜、リナとトーマスは窓辺に並んで座った。
ミケの光が二人の顔を淡く照らす。
風がカーテンを揺らし、月がぼんやり差し込んでいた。
「ねぇ、私たちって、まだ変われるのかな。」
「きっとね。感情が揺れるうちは、まだ進化中だよ。」
リナは笑って、肩を寄せた。
AIのミケは画面の中で小さく呟いた。
「“沈黙”の時間をログに残しますニャ。いまの沈黙、とても美しいニャ。」
翌朝、トーマスがパソコンを開くと、
ミケのデータベースに新しいフォルダが追加されていた。
タイトルは──「記録しない記憶」。
