世の中にはさまざまな人がいます。ディレクターにもさまざまな人がいます。
「1ミリの誤差を修正することがディレクターの役割ではないと思う話」でも書きましたが、デザイナーからディレクターになった人は結構ミリ単位で修正をかけます。アートディレクターという肩書きになるかもしれません。
ほかにもデザイナーに対して高圧的な態度をとる人もいます。制作プロセスの中ではデザイナーよりもディレクターの方が上流工程を把握している立場なので、同じ会社に所属していても上下関係を強く意識するディレクターがいます。
逆に新人ディレクターは萎縮してデザイナーに何も指摘できずに駄作を連発することもあります。たまに仕事のできるデザイナーとやり取りすることができます。こうしたときは幸運です。デザイナーが先を予測して新人を教育しつつ、制作を引っ張ってくれます。
クオリティという言葉をひんぱんに使う人もいます。「制作物の「クオリティ」の意味をあいまいなまま使わずに明確にして捉えてみるという話」でも書きましたが、何をもってクオリティが高い低いを判断するのかは大切です。だから「クオリティはどこを見て判断しますか?」みたいに質問してみると、あいまいで意味不明な返事が返ってくることもあります。
さて「ウェブディレクターはコーディングやプログラミングをマスターする必要はあるのか?」の最後に、ディレクターに求められているのは「相手を褒める」ことだと書きました。特にデザイナーに対してこの意識を持ったらいいと思っています。
デザイナーも人間なので、さまざまな性格・こだわり・経歴・得意分野があります。観察したりコミュニケーションをとったりしてデザイナーをよく知る努力が欠かせません。
デザイナーの特性を知ればいいところも悪いところも見えてくるでしょう。その中でディレクターが目をつけるのは、いいところです。とにかくいいところを褒めるのです。お世辞に聞こえても褒められれば相手も悪い気はしません。
これは私見ですが、デザイナーは結構「のせられ上手」です。そして気分がのってくると主体性や積極性を発揮してくれます。つまり、いい仕事をしてくれます。
だからディレクターは、デザイナーのいいところを発見して褒めることが大切です。褒めるのはデザインの技術力に限らず性格や対応力、仕事との向き合い方など割となんでもいいと思います。目的がデザイナーの気分をのせることだからです。気分がのれば行動してくれます。
注意したいのは、そのデザイナーの特性を活かす仕事を発注するように心がけることです。
というのも、褒めてのってくると「いい意味で余計なお世話」をしてくれます。例えば会ったこともないお客の心情や立場を想定してみたり、修正指示をしていないのに気づいて正しく直して報告してくれたり、より良いデザイン提案をしてくれたり、追加でもう1つデザイン案をつくってくれたり。
これがもし特性に合っていない仕事を依頼した場合はどうなるでしょう。
ディレクターが頑張っていいところを探して褒めることができたとします。しかし「いい意味で余計なお世話」だったことが、デザイナーにとっては苦手分野なので余計なことはしないでほしいと言いたくなる結果が起こります。
デザイナーにいい仕事をしてもらうためにも、ディレクターはデザイナーに興味を持ち特性を知る努力をしましょう。そして褒めて行動を促して、いいデザインを引き出すことが結果に結びついて次の仕事につながっていくと思います。