製版して色校しても人間の目には限界があるという話

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印刷物で特に気を使うのは色です。というのも、印刷はCMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)の4色のインクをかけ合わせて紙にのせるので、割合が違うと別の色になってしまうからです。

しかも機械的には数値で設定したとしても、実際にインクを落とすという物理的な作業なので、コンマ数%くらいかもしれませんが設定とは異なります。つまり一つひとつ色が異なります。

インクの問題だけでなく、選んだ紙の性質によってインクののり方が変わります。また季節によって気温や湿度が変わるので、印刷室はできるだけ一定に保つようにするのがいいのでしょう。

さまざまな影響で色の出方には差ができます。この色の差を極力なくすには印刷機の精密さと徹底したメンテナンス、安定した環境、インクと紙の相性の知識などが大切になるでしょう。

とはいえ紙の種類はごまんとあるので、印刷のプロが考えてやっても想定外のことは起こりうると思います。それほど印刷物は繊細で奥が深いのです。

さて私がディレクターとしてカタログ制作をしていたころ、色校正という工程がありました。試しに印刷して色を確認する作業です。

色校といって主に2種類あり、簡易校正と本紙校正です。簡易校正は安い紙で試し刷りします。本紙校正はより本番に近くなるように実際に使う紙で試し刷りします。たいていは簡易校正でした。

確認のしかたは単純で、実物と色校を自分の目で見比べます。自白すると多少の色の違いなんてわかりません。それほど色に対して目が肥えていたわけでもありませんし、その多少の色の違いを許さないからとやり直しする工程を増やせるほど時間的な余裕がありませんでした。

少し話はそれますが、以前の記事「カタログ制作の文字校正は外部の校正屋に依頼したほうがいいという話」で書きましたが、いい校正屋は疑問出しもしてくれます。それは文字に限らず、画像の色についてもです。ありがたい。その指摘がキッカケで実物との再確認を行うことができます。

話を戻して、色の違いはそれほどわからないというのが正直なところです。差があってとしても微妙なものが多いでしょう。ただお客と一緒に色校をする場面もあり、人によっては違いを指摘してくる場合もあります。たいてい色を直す時間なんてないタイミングです。

こんなとき私は、よく照明や天候が原因でしょうと言っていました。

というのも、製版所では一定の照明のもとで色を確認してから私のところへ持ってきてくれているのです。ですがお客と確認する際には蛍光灯のもとで確認します。当然、場所によって明暗の差があります。蛍光灯の種類が違えば暖色系や寒色系で違いも出ます。またガラス張りの打ち合わせ室で確認する場合もあります。天候が晴れや曇りでは明るさの違いは歴然でしょう。となると製版所での確認が一番信頼のおける作業になるということです。

だから製版所以外の場所で色の違いを判断しようとするには限界があるということです。光の種類や明るさが違う中で色の違いを見分けるには、人間の目では不可能でしょう。

色校は大切で、やったほうがいいに決まっています。ただ製版所で確認してもらうように指示を出したうえで、その結果を信じるのが一番信頼度が高いと言えると思います。