撮影でモデルに変な指示を出したけど販売促進の目標値に対して結果が良かった話

Creative

以前、通販会社を支援する広告代理店に勤務していました。その会社の制作部でディレクションをしていました。いつも終電帰りだったので参ったなという感じでした。

通販会社にはウェブサイトがたいていありますが、それ以外にも折込チラシや商品に同梱するパンフレット、ブランドブック、通販番組用の動画などいろいろあります。

印刷物を扱っているのでビジュアルづくりの一環で、モデル撮影もありました。それまでモデル撮影に立ち会った経験があまりありませんでした。その当時は、モデルさんやカメラマンにどのように指示していいものかよくわかっていませんでした。

そんな状態で美容系のモデル撮影に立ち会うことに。私は一歩引いたところから先輩の様子を見ていました。

その先輩はモデル撮影にも慣れていて、緊張感をやわらげつつ的確に指示をしていたように記憶しています。モデルさんも指示を受けて、うまく対応していました。

撮影も終盤に近づいてきたころに、先輩が私に「何か気になることとかある?」と聞いてきました。そでまでもいい写真が撮れていたと思います。ですが、何かが足りないなと感じてもいました。

少し考えました。ふと浮かんできたのが「今日よりいい明日」です。これをどのようにモデルに伝えたらいいものか。時間にして5秒もないくらいでしたが、あれこれ考えた挙句「視線をカメラから少し外して、若干上向きで、明日に希望があるという気持ちの表情をしてください」と言いました。

「明日に希望がある気持ち」って何だ?と思いながらもモデルさんに指示をしました。モデルさんも少し困惑した感じでしたが、それでも一生懸命に表情をつくってくれます。調整しながら数カットを押さえました。

後日、その数カットの中から選んで4案のデザインを新聞折込でABテストすることに。

その結果は思いがけず、どの案も折込チラシとしては高い反響がありました。折込はパッと見のビジュアルの強さが重要なのですが、どの写真にもその強さがあったのでしょう。

わからないなりにもモデルさんに指示を出して数カット撮影して良かったと思いました。クリエイティブの仕事では、いつもではないにしろ、ときには直感的に感じたことを指示するのも必要なのだと思いました。