クラウドファンディング失敗を振り返ってみた

Community

私がコミュニティを立ち上げようと思った根底には、保護者同士のつながりがあまりにも希薄であるという強い実感があります。子どもを保育園や学校に通わせていても、保護者同士が本音で悩みを語り合ったり、協力し合ったりする機会はほとんどありません。

問題が起こったとき、多くの場合は園や学校、あるいは行政の対応に任せるしかないのです。声を上げても「モンスターペアレント」といったレッテルを貼られてしまいます。そして結局何も変わらないという現実に直面します。

子どもを守りたいという気持ちはどの親も同じなのに、その声を社会に反映させる仕組みは十分に整っていません。

こうした状況を私自身が痛感したのは、長女が保育園でいじめを受けた経験からでした。

クラスの中で毎日のように暴言や暴力を受けることがあり、しかもそれは保育士の目が届かないところで起こることが多かったのです。長女は「やり返したくない」「仕返しされるのが怖い」という理由で、先生に助けを求めることもできず、ただ我慢していました。

ある日には、トイレに閉じ込められる事件もありました。ドアを押さえられて外に出られず、保育士が気づくまで泣きながら助けを待っていたと聞いたとき、胸が締め付けられる思いでした。

保育園は加害児童を注意し、その親にも指導を行ったと説明しました。しかし、その後も加害児童は娘に「先生に言うなよ」と脅すなど状況は変わりません。長女にとっては園を頼ることすら怖くなるような日々が続きました。

心の傷は深まり、特にトイレに閉じ込められた件をきっかけに精神面での不調が目に見えてあらわれました。小学校に進学した今でも定期的にクリニックに通い、リハビリや診察を受けています。

こうした経験を通じて私は、子どもを守るためには保護者自身がつながり、団結し、主導権を持つ必要があると痛感しました。

学校や行政に任せるだけでは子どもの安全や未来を守れません。だからこそ、保護者同士が安心してつながり合い、声を上げていける仕組みが必要だと考えました。そして、地域や立場に縛られず、誰もが気軽に参加できるオンラインの場こそが、その役割を果たせるのではないかと考えました。

最初の試みとして立ち上げたのが「Parent Connection」というオンラインコミュニティでした。

そこでは、保護者同士が情報を共有し、知恵を出し合い、ときには声を上げて協力できるようなつながりを目指しました。行政や企業に対して意見を届けられる組織としての基盤を築き、地域を超えて保護者が交流できるインフラを整え、子育て情報の格差をなくし、孤立を防ぐ。そんなイメージを描いていました。

勢いに任せてFacebookグループを立ち上げ、スモールスタートを試みましたが、目的も活動内容も曖昧で、対象となる範囲を広げすぎていたこともあり、期待したような広がりは生まれませんでした。

さらに、この活動を知ってもらうために挑戦したクラウドファンディングも失敗に終わりました。応援してもらうには「誰に」「何を」「なぜ届けたいのか」を明確に示す必要がありますが、その軸が十分に定まっていなかったことが最大の要因だったと考えています。実績の乏しさも重なり、支援の輪を広げることができませんでした。結果として、活動を持続させることもできず、いったん立ち止まらざるを得ませんでした。

こうした経験から私は学びました。コミュニティを続けるには、ただ理想を語るだけではなく、実績を一つひとつ積み重ね、参加する人にとって活動の意義が明確でなければならないということ。そして、対象となるメンバー像を絞り込むことが結束力を高めるうえで重要だということです。

そこで新たに立ち上げたのが「Daddy Voice」です。これは父親たちが団結し、育児や教育、そして子どもを取り巻く環境をより良くすることを目的としたオンラインコミュニティです。父親という共通の立場に焦点を当てることで、共感し合いやすくなり、より強い結束を生み出せると考えています。もちろん「父親」という枠に完全に当てはまらなくても、趣旨に共感してくださる方の参加は歓迎しています。

Daddy Voiceは、父親同士が悩みを語り合うだけの場ではありません。そこで生まれた声を政治家や行政、自治体、企業に届け、社会を動かす力へと変えていきます。

現代社会は「個」に分断されやすく、また少子社会の中で子どもの価値は高く認識されながらも、その声が社会の仕組みに十分反映されていません。だからこそ父親が団結し、ロビー活動を通じて社会に働きかける必要があります。

子どもの未来を守るためには、保護者同士の共感や慰め合いにとどまらず、社会の仕組みそのものを変えていく行動が不可欠なのです。

私は、父親が団結することで、子どもにとってより良い未来を切り開くことができると信じています。家庭の中だけに閉じたかかわりではなく、社会に声を届ける役割を担うのがDaddy Voiceの使命です。

子どもにとってより良い未来とはどんな社会なのか?娘たちが成人するころにはどんな社会になってほしいのか?思い描いた未来で生きるには、どんな教育や育児が適しているのか?より具体化しながら、まずはひとり活動をしていきたいと思います。

この新しい挑戦を通じて、子どもたちが安心して成長し、希望を描ける社会を実現するための小さな一歩を踏み出したいと思っています。