ディレクターによるチームビルディングで欠かせないのは褒めることだという話

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制作ディレクターは多くの人と関わります。ウェブ制作や動画制作、アプリやシステムなど含めると多すぎて笑うしかありません。

さまざまな専門家とのコミュニケーションが必要なので最低限の専門知識が必要です。

加えて、人には個性や性格、好き嫌い、相性があります。パズルのピースがはまるようにピタッとかみ合えば苦労はないでしょう。しかしたいていは、関係者の意見がかみ合わずぶつかります。ぶつかったときに調整が必要です。

この調整役が制作ディレクターの仕事のひとつです。仕事をしていればわかると思いますが、人間関係の調整が1番タフで正直めんどくさいと感じますよね。でも調整がうまくいったときのスッキリ感はいいものです。チーム全体の結束も強くなります。

だからこそ調整が大切。きっと多くの制作ディレクターはそれぞれ調整方法の引き出しをいくつも持っているでしょう。チームメイトに合わせて器用に使い分ける制作ディレクターもいると思います。

たとえば「軍隊式」なら制作ディレクターが隊長になります。隊長命令は絶対です。隊員は機嫌を損なわないようにゴマすりしたり、次にどんな命令がくるか戦々恐々としたり。逆らうことは許されないので思考停止する人もいます。「制作物の「クオリティ」の意味をあいまいなまま使わずに明確にして捉えてみるという話」のように指標が明確でない「クオリティ」を求められたら隊員のチームメイトはたまりません。

たとえば受発注や役職の上下関係を利用した「高圧式」なら、発注側や上の役職の人が無理難題をふっかけてきます。それも高圧的な態度で、制作現場におけるパワハラです。「「オールターゲット」という魔の言葉に困る話」のような困ってしまう条件だったり「1ミリの誤差を修正することがディレクターの役割ではないと思う話」のようなミリ単位のディレクターだったり。こうしたことを断れないように依頼してきます。

たとえば次の仕事というにんじんを目の前にちらつかせて走らせる「競走馬式」なら、たいてい安く買いたたかれます。そのうえ次の仕事はないでしょう。制作者は幻のにんじんを追いかけることになるのです。

などなど関係性によっても違いますが、どれも嫌いなやり方です。

ベストだと思うやり方は「褒める式」です。

ディレクターは人のいいところを発見して褒めて人を動かすことが求められているという話」に書いたように、デザイナーに限らず、さまざまな関係者にもそれぞれに特性があります。特性を知って発注すること、褒めることで自発的に動いてくれることが多いです。

あと忘れてならないのは、手を動かしてつくってくれる人たちの成果物はある意味その人そのものだということ。それまで学んできたこと、積み上げてきた経験からつくり上げています。つまり制作者自身の分身というか、自分そのものを形にしたようなものです。

それに対してなんの敬意もなく批判やダメ出しをされたら、9割9分の確率で言われたほうは落ち込むでしょう。

気持ちが落ち込むと一気に自信が揺らぎます。不安になり相手の中に答えを探そうとします。答えが何なのかを探りながら制作することになります他人の頭の中なんてわからないので理論的ではない制作になり、駄作が生まれます。

反対に制作者は褒めるほど乗ってきます。だって制作物を褒めることは、制作者自身を褒めているようなものです。すると制作者自身が知見をもとに考えて、自分の中に「これだ!」という着地点を見出します。こうした制作物には理論的で統一感があります。自信に満ちた制作です。しかもディレクターの盲点をフォローしてくれることも少なくありません。当然いいものが生まれます。

褒めることを強調していますが、ダメ出しをしてはいけないわけではありません。ダメ出しをしたとしてもそれと同時に褒めることを忘れないことが大切ということです。そうしてディレクターが制作者の味方であると認識してもらうことです。

だから品質の高い制作をするならチームメイトを褒めること。ディレクターがチームの仕事を成功に導くために必要なのは褒めることです。