父親として子育てに向き合ってきた中で、私はずっと「父親が本音で語り合える場があまりに少ない」と感じてきました。
長女のいじめ被害があった際に、相談できる場や声を上げる機会が見出せませんでした。もっといえば母親を含めて、保護者同士が団結するような場所や組織がありませんでした。
こうした中で育児や教育に関する悩みは誰しも抱えていますが、社会の中で特に父親の声が大きく取り上げられる機会は決して多くありません。そもそも家事・育児をしない父親が少なくないということも要因なのでしょう。
とはいえ、母親向けの支援や情報は豊富にある一方で、現状では家事・育児をする父親は悩みを抱え込み、孤立するケースが少なくないのが現実です。つまり母親を対象にした支援や場、組織はあるものの、父親や保護者全体を対象に団結を促す機会や組織は見当たりません。
団結なしに、自治体や企業などと対話や議論はあまりに無謀です。個人や保護者が不利に決まっています。
こうした課題意識から、私はオンラインコミュニティ「Daddy Voice」を立ち上げました。
「Daddy Voice」は、父親同士がつながり、悩みや経験を共有し、支え合うための団結の場であると同時に、その声を社会へ届けるプラットフォームでもあります。私たちは単に交流するだけでなく、そこで生まれた父親たちの声を政治家や行政、自治体、企業などへ発信し、社会に働きかけるロビー活動を展開していきます。
父親の意見や想いが社会の仕組みに反映されていくことで、子どもたちにとってより良い未来を切り拓くことができると信じています。
現代社会は「個」に分断されやすく、家庭や地域のつながりも希薄になりがちです。また少子社会の中で子どもの価値は非常に高く認識されているにもかかわらず、少数派だからこそその声や想いが社会の仕組みや政策に十分反映されていないという矛盾も存在しています。
この状況で父親同士がただ悩みを共有するだけにとどまっていては、子どもの未来は守れません。父親自身が団結し、その声を社会に届けていくことで、ようやく「子どもを中心に据えた社会の仕組み」をつくることが可能になるのです。
「Daddy Voice」では、まず父親同士が安心して語り合える土壌を築きます。そこから得られる共感や知恵を、社会を動かす原動力に変えていきます。
例えば教育や福祉政策に関する意見を行政に届けたり、子育て世代に優しい働き方を企業に提案したりといった活動を通じて、父親の立場から社会の改善に関わっていきたいと考えています。その先に目指すのは、子どもたちが安心して未来に希望を描ける社会です。
私は、父親が声を上げることは「家庭を守るため」だけではなく、「社会の未来をつくるため」にも必要だと考えています。父親が団結することで、一人では届かない声を社会に届けることができる。その積み重ねが、子どものためのより良い仕組みを築いていく力になります。
本当は母親も含めて保護者全員を対象としたいところですが、私自身が父親なので、共感が生まれやすく団結しやすいのは同性の父親だろうと思い、父親に向けたコミュニティにしようと思いました。
「Daddy Voice」はまだ始まったばかりの挑戦ですが、ここに集う父親たちの声が束になれば、社会を少しずつ変えていく大きな力になると信じています。そしてその力は、子どもたちの未来を明るく照らすものになるはずです。


