どんなにすばらしい製品でも欠点やデメリットなど、売る側としては言いたくないことはあります。今では生活に欠かせないスマートフォンでも、その依存性の高さを指摘されていますが売る側は少しでもスマートフォンを見ている時間を増やそうと開発に力を入れます。
iPhoneにはスクリーンタイムという機能があり、どのくらい画面を見たり操作したりしていたかがわかります。一見するとメーカー側の注意喚起のようでユーザーに優しい企業だと思います。ですがメーカーは常に、いかにしてシェアを獲得しようかと考えるものです。
だからこのスクリーンタイムのデータを見て、売る側はさらにスクリーンタイムを伸ばすために設計や心理学、デザインを駆使して製品への依存度を高めようとします。売らなければいけない企業としては当たり前のことです。営利法人は利益を最大化することが目的なのでなにも悪いことではありません。
こうした欠点やデメリットが存在するのは、なにもスマートフォンに限ったことではありません。自動車であれ高級時計であれ家電製品であれ必ずあるものです。完全無欠の製品はないのでしょう。
さて冒頭でも書いたように、欠点やデメリットは言いたくないものです。そうしたときに製品カタログを考えてみましょう。例えば家電製品。特長やメリットはしっかり訴求しますが、欠点やデメリットは記載しません。なぜなら売れなくなる可能性があるからです。
しかし本当にそうでしょうか? 今はインターネットが当たり前にある時代です。店頭に来たお客は、少なくとも若年層は製品を眺めながら必ずスマートフォンとにらめっこしています。その視線の先には比較サイトがあります。
比較サイトをつくっている人たちも本気でウェブサイトを制作しています。最新情報を徹底的に調べたり、ときには実物で実証実験のようなことをしたりしています。比較サイトを見ると気になる家電製品の強みも弱みも一目瞭然です。
だから誰も製品カタログを手に取ろうとしません。以前に書いた「販売員に営業をかけられるのが嫌な時代にカタログは以前にも増して重要な販売促進ツールだという話」にあるとおり、店員と接触したくなくてカタログを手にするお客は少なくないと思います。店員とは接触したくない、けれども実物は確認しておきたいから店頭に来るのです。安心感が欲しいからです。決してカタログが見たいからではありません。
ウェブの比較サイトで製品を絞り込んでおいて店頭に行き、実物を確認して購入することが今の購入行動のひとつのパターンでしょう。というかこのパターンがほとんどだと思います。
カタログだと、比較サイトのように他社製品を横に並べるようなことはできません。とはいえ本来なら比較サイトのような役割を果たすのがカタログなのではないでしょうか。
家電製品を買おうと店頭に実物を見に来たお客が他社製品と比較して、よりよいものを購入する手助けをするのがカタログの役割だと思います。買い物の手助けをするカタログが自社製品のいいところだけしか書いてなかったら、そのカタログは信用されるでしょうか?
比較サイトがある時代です。カタログの内容に猜疑心を抱くのはふつうでしょう。言葉を選ばずに言えば、そんなカタログに目を凝らすのはストレスです。
「カタログは万人向けではなくペルソナに向けた内容で制作するのがいいという話」や「制作の際にベンチマークするのは業界1位ではなく自社のひとつ上の順位の企業にしようという話」を参考にしてみてください。加えてここで伝えたいのは、自社製品の欠点やデメリットがあってもそれは記載すべきです。隠そうとしても比較サイトでバレバレです。隠そうとしたこと自体に不信感を抱く可能性もあります。
もちろん「ここがダメな製品なんです」という直球な書き方ではありません。そこはポジティブな意味づけをしてあげます。そしてペルソナを前提に、自社のひとつ上の順位の企業と比較しやすい内容に落とし込めるといいでしょう。
きっと購入を検討しているお客の役に立つカタログになります。そしてそのカタログは信用され、企業に対する高感度や信頼も高まると思います。